この記事では、コンデンサインプット型の整流回路の力率について解説していきたいと思います。
力率とは
力率とは、供給された電力に対して、有効に働いた電力の割合を表した数値です。
例えば、ある回路に電圧100Vを入力して1Aの電流が流れた場合を考えると、
電力=100[V]×1[A]=100[W]
となるはずです。
しかし、実際には60%しか電力を得られなかったとすると、力率は60%となります。
多くの回路製品には、内部にコンデンサやコイルが入っています。コンデンサやコイルは交流に対して、位相を遅らせたり進めたりする作用があるため、入力した電力に対して、出力する電力が低下します。
抵抗のみの場合の力率
交流電圧を抵抗に印加した場合の力率を見ていきます。
LTspiceを用いて力率を確認していきます。図1のようなモデルでシミュレーションを行いました。力率の確認には「.four」コマンドを使用します。
入力電圧と入力電流の波形は図2のようになります。抵抗のみが繋がっているため、入力電圧と入力電流はぴったり重なります。(位相はずれません)
力率の確認結果を図3に示します。PFという部分が力率になります。PF=1、つまり、力率は100%となります。抵抗だけであるため、入力した電力はすべて抵抗で消費されるため、力率100%になります。
コンデンサインプット型整流回路の力率
本題のコンデンサインプット型整流回路の力率について見ていきたいと思います。
LTspiceを用いて力率を確認していきます。図4のようなモデルでシミュレーションを行いました。力率の確認には「.four」コマンドを使用します。
入力電圧と入力電流の波形は図5のようになります。平滑用コンデンサに充電される時のみ、電流が流れるため、電流波形はとても歪んだ波形となります。
力率の確認結果を図6に示します。PF=0.557776、つまり、力率は55.8%となります。平滑化コンデンサが入ることにより、電流波形が歪むため、力率も低下することがわかります。
コイルによる力率改善
受動部品のコイルを挿入することで、力率改善を行う方法を紹介します。
図7のようなLTspiceモデルでシミュレーションを行いました。ダイオード整流回路と平滑化コンデンサの間に1mHのコイルを挿入しています。
入力電圧と入力電流の波形は図8のようになります。コイルが無い場合の図5と比較して、ピーク電流が抑えられ、波形の歪みが抑えられていると思います。
力率の確認結果を図9に示します。PF=0.646602、つまり、力率は64.7%となります。平滑化コンデンサだけの場合と比較して、約10%程力率改善されていることがわかります。
今回はパッシブ型の力率改善について紹介しました。MOSFETなどを使用したアクティブ型の力率改善の方式もあり、そちらではさらに力率改善をはかることができます。
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